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ソフィーは、いつだって僕に新しい世界を見せてくれた。
ソフィーと言うのは僕の従姉で、僕の二つ年上の女の子だ。
僕の両親は彼女と彼女の両親を嫌っている。
彼女の家は近所付き合いを含む、あらゆる親交の全てを絶っているように見えたし、僕の両親が良く思わないのも仕方が無いのかもしれない。
彼女の母親が売春婦だったり、父親が刑務所から帰ってこなかったりと、そう言う事も関係していると思うけれど。
(もっとも、そんな家庭に踏み込んだ事情を僕が知ったのは少しだけ未来の話になるのだが)
そして、決定的なのは、ソフィー自身も人々に愛されるような人柄では無いと言うことだった。
彼女の行動は、子供達の間では神話のような扱いで噂されていた。
その中でも印象深いエピソードに、自動車の事故の話がある。
彼女は、十歳の時に母親が買った車を勝手に運転し、街路樹として植えられていたりんごの木に衝突させると言う事件をやらかした。
その時、助手席に半ば強引に座らせられていた僕は共犯者とされ、僕の両親は車の損害の半額の金額を支払うことになったらしいのだが、それは別に良い。
ただ、僕が制止した時の『出来ないなんて決め付けないでよ。出来るかどうか試してるんだから』と言う言葉が、彼女の人格を物語っていた。
とにかく、彼女はそう言う、思い立ったら行動せずにはいられない人間だった。
何にも束縛されず、どんなものよりも自由に見えた。
興味を引いて、面白そうと思った場所に飛び込み、いつも僕を巻き込んだ。
そんな彼女が僕の部屋に何度目かの侵入を試みたのは、彼女が十五歳、僕が十三歳。十月のある日の事である。
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