古本青年

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 私は祖父が経営する古本屋の隅で本を読んでいた。蛍光灯がチカチカと明滅し、点いたり消えたりを繰り返していた。    立てつけの悪い引き戸がガタガタと音を立てて開いた、ほっそりとした男性がダンボール箱を抱え、よろよろと入ってくる。 「すいません。……あれ?店長さんは?」 「外出中です」と私は読んでいた本を置いて言った。「川原にザリガニを釣りに」 「一体何の為にザリガニを?……まぁいいや、君、本を売りに来たんだがいいかな?」  と男性はダンボール箱をカウンターに置いて箱を広げた。 「絵本が沢山ありますね」 「子供のなんだがな、新しい絵本を買うついでに古い本は売ることにしたんだ」  男性は一冊ずつ本を取り出していく、十数冊ほど詰まれた絵本の山に、ある一冊の本を見つけた。 「ラ・タ・タ・タム。だ」 「知っているのかい?」 「はい、祖父が好きな絵本で毎回のように自慢するんですよ、これは私が出会った絵本の中で最も素晴しい絵本だと」 祖父はこの絵本が大変お気に入りのようで、この本があって今の自分があるとも言っていた。
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