ACT・1

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春の始まりにしては、今日はやけに冷える。 「寒っ」 おれ―中山祥―は、羽織っていたコートのポケットに手を突っ込んで肩をすくめた。 電車の中は温かかったから、余計に寒い。 鼻を啜っていると、ポケットに入れておいた携帯電話が手の中で震動し始めた。 ついこの前手に入れたそれを取り出す。 それまでずっと『欲しい、欲しい』と言い続けて来たおれに、『じゃあ自分で買え!』と母さんは言い放った。 悔しいから、お小遣いやお年玉を貯めて本当に買ってしまった。
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