修学旅行のジンクス

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10年ぶりに隣に並んだ金井くんは、あの頃よりもずっと大人の男の人になっていた。 当たり前といえば当たり前だけど、中学生だった印象が強すぎて、今の金井くんは私の知っている金井くんじゃないみたいだった。 無造作にセットされた髪や、ほのかに感じる甘い匂いや、骨張った大きな手。 時々、肩や腕が触れ合うたびに、心臓がこれでもかというくらいに飛び跳ねた。 忘れていた想いが心の奥底からそっと顔をのぞかせる。 好きだったのに、素直になれなかったあの頃の私。 隣にいるのに金井くんの方に顔を向けるのが恥ずかしくて、視界の端で、身体の右半分で、彼を感じていた。 生意気な口調で、さも興味なさそうに金井くんの会話に応じていた自分に何度も後悔した。 思い出すと、泣きそうになるほど不器用で懐かしい恋。
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