別れの旅

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搭乗案内のアナウンスが、ざわめくロビーに凛とした声で響き渡る。 ガラスの向こうには、離陸準備の整った飛行機が空へ飛び立つのを今か今かと待ち望んでいるように、ゆっくりと弧を描きながら、順々に滑走路へと進んでいく。 飛び立った飛行機はやがてその姿を小さな光の粒にして遥か彼方へと消えてゆく。 夜の帳が少しずつ降りてくる。 見上げるほどに濃い藍色に染まる空は、この旅の終わりが近いことを知らせているかのようだった。 那覇空港の搭乗待ち合いロビー。 ガラスの向こうの景色とは対照的に、室内のざわめきはどことなく明るさを含んでいる。 お土産の袋を手にした人たちの華やかな笑い声や、テレビから流れる三線(さんしん)の小気味よい音色を耳にしながら、私の気持ちはどこかよそよそしかった。 羽田行きの搭乗手続き終了まで、あと30分。 手に握りしめた携帯をさっきから何度も何度も確認している。
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