別れの旅

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「一人旅ですか?」 さっきから荷物を挟んで1つ隣に座っていた女の人が声をかけてきた。 「はい。あ…もしかして」 「えぇ。私も一人旅なんです」 にこやかに笑った彼女は同年代くらいだろうか。 明るい茶色のショートヘアがよく似合っていた。 「どちらに行かれていたんですか?」 「宮古です。あなたは?」 「私は波照間に」 そうですか、と笑う彼女はどこか話しやすい感じがして、それからしばらくお互いの旅の話をした。 ただただ携帯とガラスの向こうとにらめっこよりはずっと気が紛れる、そう思っていた矢先、手にしていた携帯から着信音が鳴った。 一瞬で自分を包む空気がピリッと変わった気がした。 『着いた』 たった一言のメール。 それを見て私は立ち上がった。
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