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その惑星は、地球によく似た美しい星だった。
大地の多くは緑に覆われ、平野では野生の動物などの生き物が草を食み、森では獣や虫が食物連鎖を起こしながら精一杯生きている。荒野にすら命が芽吹き、生きる動物がいる。
海は浅瀬から深海に至るまで、姿だけでなく大小様々な生命が存在し溢れかえっている。
空はときおり雲と鳥を泳がせて、青が何処までも広がっていた。
雄大な自然が広がる平野で、人間が造った街は異色を放っていた。
朝の日差しが街を囲む壁を照らし、熱を持たせる。門を開いた影の部分だけがうすら寒い。
その門の下に、人だかりができていた。
歓声を上げる何十もの市民と、道を作るように門の両端に並ぶ甲冑の兵士たち。規則正しく並ぶ彼らの手には、剣を模した紋章が刺繍された旗が掲げられている。
その道の中心に、兵士とは異なる鎧を着た二人の男が立っていた。
一人の男は、まるで神話からそのまま現れたような美しい鎧を纏っていた。
上半身と腰回りを覆う白銀の鎧は、胸部分に旗と同じ紋章が描かれている。頂点に赤い房が付いたフルフェイスの兜を脇に抱えていた。
腰には、ひときわ輝く一本の刀が下げられていた。鎧と同じ白銀でできた鞘に収まるそれは儀礼的で、まるで芸術品のような美しさだ。
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