君は、白い。

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 本人に尋ねてみたら、彼女はきょとんと首を傾げていた。 「さぁ、知んない。鳴世、生まれたときから鳴世だもん」  鳴世は年のわりに幼い感じのする、不思議な少女だった。  僕が十三歳になったとき、 「これから、女の子とはあまり遊んじゃいけませんよ」  と、母さんは静かな声で言ったが、鳴世と会うことはべつに止めたりしなかった。  幼馴染だから、急に避けだすのもおかしいと考えたのかもしれないし、鳴世は女の子といってもまだあどけないからかまわない、ということなのかもしれない。  戸惑っている僕の周辺で、あるころから、同い年の女の子たちはぐんと成長しだした。といっても、身体が大きくなったわけではない。女性らしい仕草や表情が身についてきたというか、大人の女と変わらない存在になってきたのだ。しかも、その動作や微笑みが、べつだんとってつけたようではなく、自然なものとして彼女らを包み始めた。  つい最近までいっしょに遊んでいた娘は、和裁教室とやらに通いだし、僕や他の少年たちに寄りつかなくなった。いくつか年上の女の子は、この間花嫁になって隣村へ嫁いでいき、その妹も今度結婚するという。  僕ら男にとって、少女たちはいつの間にか、近くにいながら触れてはいけない存在になっていた。白い手も小さい顎も、くるりとした瞳も、彼女たち自身と未来の夫のためだけにある。 「つまらないな」  何となくそれは、おもしろくないことだった。  僕だって、いつか少女たちのうちの一人を妻にするに違いないが、今こうして眺めているだけの時間があまりに長く感じられた。  
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