1043人が本棚に入れています
本棚に追加
/158ページ
「萌香さんもそう思わない?」
マコトはシルバーを拭きながら、私にも同意を求めてきた。
「そ、だね……」
曖昧に返事をしながら、意識は別の所にあった。
そうだよね。
私と彼じゃ釣り合わないよね。
不安と嫉妬が私を卑屈にさせていく。
ただマコトの言葉に笑うしかなかった。
「萌香さん、どうしたの?顔色悪いよ?」
ふと顔を上げてこっちに向いたマコトが、私の顔色に気付き額に手を添えた。
「今日、病院が忙しかったからかな?大丈夫だよ。煙草吸って来ていい?」
「熱はなさそうだね。本当に大丈夫?今は暇だから休んで来ていいっすよ」
マコトに心配かけまいと、嘘をついて喫煙所に行くと煙草に火を点けた。
これ以上、彼と詩織さんを見たくなくてあの場から逃げてしまった。
どうしよう……。
あの2人の姿が頭から離れない。
彼が好きで堪らないって顔の詩織さん。
私が見たこともない彼の顔。
思い出しただけで、胸にズキンと鈍い痛みが走る。
これから、あんな場面を何度も見なきゃいけないのかぁ。
それにマコトのさっきの言葉。
『詩織さんとは付き合った事はないみたいなんだけど、彼女が居ても他の遊びと違ってずっと続いてるんだって』
『お気に入りなんじゃん?』
『あの2人、お似合いだよね?』
あは。
私、自惚れてたのかも。
自分がもしかしたら彼のお気に入りなんじゃないかと……。
バカみたい、そんな訳ないのに。
彼には詩織さんっていうあんな綺麗な人を気に入ってたのに、私なんて到底及ばない筈だよ。
好きとも言えない、彼のお気に入りですらないのに……。
バカな私はこの期に及んでも、まだ彼との関係を断ち切りたくないとさえ思っている。
「こんなに好きになっちゃって……バカみたい……」
溢れてくる涙を拭いながらポツリと呟いた。
煙草を揉み消すと、もう一度涙を拭いて店内に戻った。
ただ、そのままじゃホールに出れないからトイレに向かって顔を洗った。
「大丈夫!目も赤くないし、泣いてたの気付かれないよね?よしっ!」
ペチペチと頬を叩いて気合いを入れると、ホールに戻った。
ホールに戻ると、詩織さんの姿はどこにもなくて内心ホッとする。
「萌香さん、大丈夫?」
マコトが心配そうに近寄って来た。
「もう大丈夫だよ。マコ、心配かけてごめんね?」
「あっ、本当だ!顔色戻ってる。マジで心配したじゃん」
良かった!
泣いたの、バレてないみたい。
最初のコメントを投稿しよう!