最大のライバル出現

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何故だか分からねぇけど、萌香の事を想うと不安になる。   今までなら必ずと言っていい程に、女の方から『好き』と言って来たのに。   ぶっちゃけ、『好き』と言う言葉は、女が言うもんだって勝手に思ってた。   だけど、何度抱いても萌香の口から一度もその言葉を聞いた事ねぇ。   何で萌香は言わねぇんだ?   今だって、何事もないようにマコトと楽しく喋ってしてるしよ。   萌香が何を考えてるか分かんねぇわ。   「飛翔、聞いてる?」 「えっ?悪(わり)ぃ、ボーッとしてた」 目の前に詩織が居るっつうのに、萌香が気になってしょうがねぇ。   「ここに来る度に、マコっちゃんと話してる彼女しか見ないんだけど?って言ったのよ」   突然、詩織の口から萌香の話題が出て焦る。   「女のバイトは彼女だけ」 「そうなんだ、可愛い人ね。マコっちゃんと同い年?」 「いや、俺らとタメ」 「私と同い年?可愛いくて羨ましわ。彼女、絶対モテそう!うちの店に欲しいな」 「これ以上、人手少なくなるのマジごめん」 「冗談だってば。それより、飛翔……」 詩織が声を潜めて耳打ちしてきた。 まぁ、言わんとしてる事は想像つく。 詩織の声がねだる時のようにオンナになっていたから。 「最近、私の部屋に来てくれないじゃない?今日久しぶりに愛されたい」 「ごめん……今日ダチと約束入れちまった」   詩織は俺が他の女を抱いても何も言わない、俺にとって都合のいい女で。 萌香と出会う前に遊んでた頃は、付き合ってる女が居ても詩織だけは誰よりも抱いていた。 それなのに。 そんな詩織の誘いを断った。   「最近、飛翔とエッチしてなぁい。他にそうゆう人できたの?」 「そんなんじゃないって……」   詩織の言葉に曖昧に返事をする。 詩織は、ふぅんと言いながら何気なく萌香の方を見ていた。   2回目に萌香を抱いたあの夜以来、萌香以外の女は抱いていなかった。   もちろん。 目の前にいる詩織も例外じゃねぇし。   今までの俺なら付き合ってる女が居ても、それだけじゃ飽き足らずいろんな女とヤリまくってた。   だから【歩く野獣】って呼ばれてるんだけど。   そんな俺が今では萌香にしか欲情しなくなった。   何故か分かんねぇけど、萌香だけは他の女と同じように扱いたくねぇんだよな。   なのに、この不安は何なんだ?   でもまさか、俺以上に萌香が不安に思ってたなんて。 まだ俺は知らなかったんだ。
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