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「お待たせしてすみません。」
「いいけど、どうしたの?」
由希が美咲に話し掛ける。
「実は、叔父にご飯を誘われたんですけど。叔父の誘いを断れるかと思って、つい病院の先輩達といるからって叔父に話したんです。そしたら先輩も連れて来いって……」
美咲は小さい頃に両親を亡くしていて、父親の弟である叔父さんが美咲を引き取って育ててくれたと前に聞いた事があった。
あれ?
でも確か、美咲と叔父さんって、仲良かったような。
「美咲、叔父さんと仲良かったよね?なら何で断るの?」
素朴な疑問を美咲に投げ掛けてみる。
「仲は良いですよ。ただ、叔父が毎回連れて行ってくれる所ってクラブなんですもん」
美咲はそう言うと、溜息を吐いた。
「美咲の叔父さん、かなり若いじゃん?」
美咲が苦笑いしながら、由希の間違いを訂正する。
「あのぉ、由希さん。クラブって言っても、踊る方じゃないですよ?」
「えっ!?違うの?」
「違います。ホステスさんがいる方です」
「へっ!?」
まさかとは思ってたけどやっぱりね。
本気で間違えてたのか。
由希、あんた面白すぎだし。
美咲の叔父さんは会社の社長さんだって聞いた事あったっけ。
「叔父は社会勉強だからと言うんですが、何度行っても慣れなくて」
「だから、私達に着いて来いと?」
「お願いします。今日だけ付き合って貰えませんか?」
美咲がそう言って頭を下げた。
「クラブなんて行った事ないから面白そう。萌香行ってあげようよ?私も社会勉強してみたい」
由希はこの状況を楽しんでたけど、私はクラブという言葉に引っ掛かる。
まさか。
会わないよね……?
そんな事が一瞬頭を過(よぎ)ったけど、美咲が今にも泣き出しそうな顔してるので、一緒に行く事にした。
「分かった。美咲の顔を立てて一緒に行くよ」
私の言葉で美咲の顔が明るくなる。
「萌香さん、由希さんありがとうございます。」
私と由希は残っている飲み物を飲み干すと、美咲と一緒にカフェを出た。
途中で美咲の叔父さんと合流し、普段の私達では絶対に入れない高級焼き肉をご馳走になった。
焼肉屋を出ると、叔父さんの専用の車で目的地に向かうと。
そこはよりにもよって銀座だった。
大丈夫だよね……。
銀座って言っても、お店はたくさんあるんだから。
でも。
私の期待は空しくも大きく裏切られる事になるんだ。
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