最大のライバル出現

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ママと呼ばれる人が、真っ先にこのテーブルに来ると美咲と叔父さんに挨拶をし始める。   「島崎さん、美咲さんいらっしゃいませ。」 美咲達に挨拶しているママを見て、愕然として思わず俯いた。   まさか! 嘘でしょ? こんな偶然って……。   美咲と叔父さんに挨拶をしている着物姿の綺麗な女性は見覚えのある人だった。   詩織さん。 彼女がこのお店のママ……なの? 美咲の叔父さんが贔屓にしてるお店が詩織さんのお店だったなんて……。 こんな偶然ってあるの? それとも神様の悪戯なの? どっちにしろ、今の私には世間は狭いって言葉で片付けられるレベルじゃないのは確か。 先日バイト先に来た時とはガラリと印象が変わって、着物姿の詩織さんはより一層綺麗で心が折れそうになる。 「あら?今日は可愛いらしい女性もご一緒なんですね?美咲さんのお友達?」   詩織さんが笑顔で美咲に尋ねてくる。   「はい、職場の先輩なんです」   美咲がそう答える。   由希が詩織さんに挨拶をしたので、私も覚悟を決めて彼女を見た。 色んな感情を伴いながら血液がものすごい早さで体中を駆け巡っていくような気がした。 一瞬。 私を見た詩織さんは驚いた顔をしたけど直ぐ笑顔になる。   「じゃあ、こちらのお嬢さま方も看護師さん?初めまして詩織と申します。今日はお越し下さってありがとうございます。ごゆっくりして行ってくださいね?」   詩織さんがそう言うと、名刺を私達に手渡してくれた。   詩織さんらしい上品でセンスのいい名刺。 これだけでも、詩織さんの人柄に触れたような気がして胸が痛くなる。   「ところで、ママは萌香さんと知り合いなんですか?今、萌香さんを見て驚いたように見えたんですけど?」   美咲がさっきの表情に気付き、詩織さんに訊(たず)ねている。   美咲。 あんた中々、鋭いんですけど。   美咲の勘の鋭さに笑うしかなくて。   「いいえ。とても可愛いらしい方なので、見惚れていただけですよ」   綺麗な詩織さんから可愛いと言われると、複雑な気分になる。 とりあえず、詩織さんはバイトの事を美咲に黙っていてくれた。 「ママも席に着いて乾杯しよう」 「ありがとうございます。では失礼致します」 叔父さんに促されて詩織さんが席に着くと、もう一度乾杯の仕切り直しとなった。 出来る事なら、いっそこの場から逃げ出したい。 乾杯しながら本気でそう思った。
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