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「萌香さんも由希さんも、こういうお店は初めてなんですよね?」
突然、薫さんが話し掛けてきた。
「あっ、はい。こういうお店はテレビでしか見た事がなくて……」
「こういう機会じゃないと銀座のクラブ体験なんて出来なかったと思います」
「お2人とも初めてのお店がうちでツイてらっしゃいますね」
ツイてる?
私からしたら、ツイてると言うよりもこんな偶然いらなかったんだけど。
「どうしてツイてるんですか?」
由希が薫さんに聞き返す。
「だって詩織ママはこの銀座で伝説の人なんですから」
「伝説……ですか?」
薫さんの言葉に美咲と叔父さんは笑顔で頷いている。
伝説ってどういう意味なんだろう?
私も由希もその意味が分からず首を傾げた。
「この銀座には有名なママは何人もいらっしゃいますが、ママもそのお1人なんです」
薫さんがそう言って話始めたので、由希と2人で耳を傾けた。
「普通、この銀座で自分のお店を持つには他のお店で沢山の経験を積んでからじゃないと難しいんです。オーナーママになるには、早くても30代なんですけど、詩織ママはそれを20代で一昨年実現したんです。それもあり、ママに憧れてる若い子がこの銀座には沢山居るんです」
そもそも銀座のクラブどころか、この業界の事全く知らないから何がすごいのかすら分からない。
「それって、そんなに大変な事なんですか?」
由希も同じ事を思ったのか、薫さんにそう言う。
「そうです。ここ銀座にお店を持つにはそれなりのお金と人脈が必要なんです。特に人脈はお客様からの信用・信頼も必要ですし、何より銀座にいくつもあるお店のママからも認められなければならないんです。その為に沢山の経験と知識を身に付けないと、いくら早くお店を出したとしても長くは続かない事の方が多いんです。もしお店を出すとなったら早くても30代半ばからで、ほとんどのママは40代以上でやっとお店を出してるんです。それくらい大変なのに、詩織ママは27歳で銀座でオーナーママになったから伝説なんです」
すっ、すごい……。
薫さんの説明を聞いてるだけで、完璧に自分とは次元の違う別世界に頭がクラクラしてきた。
隣に座って居る由希をチラッと見ると、同じように呆然としてるし。
「じゃあ、つまり銀座にお店を出すっていうのはステータスって事なんですか?」
「そうなるね」
私の問い掛けに叔父さんがそう答えてくれた。
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