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薫さんの説明で、ようやく私と由希は理解する事が出来た。
詩織さんがどれだけ凄い人なのかを……。
「薫ちゃんったら褒め過ぎよ?」
詩織さんはニッコリと笑いながら謙遜している。
これがまた全然、嫌味を感じさせないのは詩織さんの人柄なんだろうな。
こんなにも自分とは違い過ぎる女性(ひと)だもん、ライバルなんて畏(おそ)れ多いよ。
美貌も。
知識も
名誉も。
富も。
それら全てを持っている詩織さんにかなう訳なんてないよ……。
バイト先で見た2人の光景を思い出す。
私にはあんな表情(かお)を見せた事ないから、彼だって詩織さんがいいに決まってるよね。
マコトが言ってた。
2人の関係は長いって。
「……か?」
最初から私が間に入る隙なんてなかったったのかも……。
「萌香ってばっ!」
突然由希に話し掛けられて、我に返った。
「さっきから読んでるのに、何ボーッとしてんのよ?」
「えっ!?あっ、ごめん、何?」
「ママが萌香に話し掛けてたんだけど、大丈夫?」
「えっ?あっ、あの何でしょう……?」
何を言われるかビクビクしながら、詩織さんに視線を向けた。
「そんな大したことじゃないんです。萌香さんはとても可愛い方だと思ったので、彼氏とかいらっしゃるの?ってお訊きしただけなんです」
微笑みながら、まさかの直球に戸惑う。
何で……。
そんな事、聞いてくるの?
「今は……居ない……です」
笑って誤魔化してみたものの、ひきつってるのが分かる。
「でもそんなに可愛いんですもの、好きな方はいらっしゃるでしょう?」
綺麗な詩織さんから可愛いと連呼されると、見下されてるような気になってしまう。
詩織さんにそんなつもりはないんだろうけど、ネガティブでヘタレな私を卑屈にさせるには十分だった。
その後も詩織さんは私に色々と訊いてきた。
もしかしたら、詩織さんは気付いてるのかもしれない。
私が詩織さんの気持ちに気付いたように……。
詩織さんは接客のプロだから、あからさまに私にだけ質問という訳じゃなくて、みんなにも同じ事を質問していたから由希も美咲も気には止めていなかったけど。
詩織さんと話す度に、劣等感と不安と嫉妬でいっぱいになっていくのを感じていた。
ただでさえ、さっき由希に散々セフレって言われてヘコんでるのに。
出来る事なら、詩織さんから逃げ出したい。
でも。
それだけじゃ終わらなかったんだよね。
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