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あれから2日後。
夜勤明けで欠伸をしながら、病院の敷地を出たとこで足を止めた。
視線の先には見覚えのある人が立っていた。
えっ!?
何でここに……?
「詩織……さん」
そう呟いたのと、彼女が私に気付いたのはほぼ同時だった。
私に気付いた詩織さんは軽く会釈をしてニッコリと微笑んだ。
「どうして……?」
「あの、待ち伏せするような真似してごめんなさい……美咲さんから萌香さんが今日夜勤明けだと聞いて、ここで待ってたら貴女に会えるんじゃないかと思って待ってたの」
会いたかった……って私に?
詩織さんが態々(わざわざ)私に会いに来るって事は、どんな内容かは想像がつくけど。
「ここじゃ何ですから場所変えませんか?」
とりあえずそう言うと、詩織さんは軽く頷いた。
「病院の場所を知ってたんですか?」
「私の掛かり付けなの。実は、美咲さんに紹介して貰ったのよ」
そう教えてくれた詩織さんをチラッと見る。
詩織さんは私よりも身長が15cmほど高くてスタイルも良くて、容姿端麗、才色兼備っていう言葉が似合う女性(ひと)。
いつものカフェではなく、その近くの喫茶店に詩織さんを案内した。
席に着くと店員が注文を聞きに来た。
詩織さんはアイスコーヒーを、私はカフェラテをそれぞれ注文する。
暫くすると飲み物が運ばれて来た。
一口カフェオレを飲むと、改めて詩織さんを見る。
今日の詩織さんは一昨日と同一人物とは思えない程、年相応な格好をしていた。
「あの、一昨日はバイトの事を美咲に黙ってて下さってありがとうございました」
先ず、詩織さんにお礼を言う。
「あの仕事は、お客様のプライバシーは守秘義務が基本だから気にしないで?私の方こそ、待ち伏せするみたいな形で勝手に来てごめんなさい」
詩織さんはそう言うと頭を下げた。
「いえ……それで、私に話したい事って」
切り出しのは私の方。
「あのね……」
何かを決心するかのように、詩織さんは大きく深呼吸をすると話し始める。
「あの、私の勘違いだったらごめんなさいね?もしかしたら萌香さんって、吉村さんの事を好きじゃない?」
頭を上げた詩織さんが単刀直入に訊いてくる。
ビクッ……。
ほら、やっぱり。
分かってたとは言え、カップを持つ手が一瞬止まる。
動揺を隠すようにカフェオレを一口飲む。
詩織さんの揺るがない真剣な眼差しに、思わず目を逸らしてしまった。
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