最大のライバル出現

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「あの頃は若かったのね。飛翔に彼女が居ても自分から話し掛ける事も出来ずに、見てるだけで精一杯だったわ。それでも好きだったから、少しでも彼の瞳に映りたくて、同じ講義を受けてみたりしたけど、結局卒業するまでまともに話す事もなかった。もちろん、卒業してからも会うことはなかったけど、彼の事忘れられなかった。だけど……」 冷めてしまったカフェラテを一口飲みながら、彼女の話しを黙って聞いていた。 詩織さんは懐かしそうにフッと表情を和らげた。 「卒業してから1年経ったある日、飛翔と再会したの。私ね、引っ込み思案の性格を直したくて学生時代から夜の世界でバイトしてたんだけど、私が当時勤めてたお店に彼が上司に連れられやって来たの。まさか、飛翔と再会出来るなんて思ってなかったからすごい驚いたけど、それ以上にほとんど話した事もない私の事を覚えててくれてた」 何で、私はこの女性(ひと)と彼の思い出を聞いてるんだろう……。 もうこれ以上は聞きたくない!と耳を塞ぎたいのに、体が動かない。 「あれは偶然だったのかもしれない。でも私は彼と再会したのは運命だと思ったの。彼が覚えててくれて嬉しくて。その時にも彼には彼女がいたけど、もう見てるだけじゃ嫌で2番目でもいいからと彼に言ったわ。そこから私と飛翔の関係は今も続いてるの」 「……っ!?」   詩織さんの意外な言葉に、愕然として彼女を見た。 詩織さんは哀しそうに微笑んでいる。   こんな時でも、美人は絵になるんだと思ってしまう馬鹿な私。 「馬鹿な女だと思う?飛翔が遊び人なのは分かってる。私はそれでもいいの。いつかは彼の1番になれると信じてるから……」   詩織さんはそう言うけど……。 私には納得出来ない。 「本当に……それでいいんですか……?」   思わずそんな言葉を発していた。   切なすぎるくらい詩織さんの彼に対する想い、同じ女として彼女の気持ちも分かるけど……。   でも、そんなの間違ってる。 「詩織さんは、本当にそれでいいんですか?」   もう一度、同じ言葉を詩織さんにぶつけると、今度は詩織さんが私を見つめてきた。 「萌香さん……?」 「何で、1番に拘(こだわ)るんですか?本当に好きなら1番じゃなくてオンリーワンになりたいって思うのに……」 「飛翔はね、誰にも本気にならない人だから……」   ズキッ……。   詩織さんの言葉がまた胸に突き刺さった。
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