最大のライバル出現

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詩織さんがすごい嫌な女性(ひと)だったら良かったのに……。 そうしたら、『私も彼が好き』と正々堂々と言えたかもしれない。 なんて、詩織さん相手に言える筈もないんだけど。 それでも、こんな切ない想いだけは感じなくて済んだのは確か。 彼女と話す前は、彼と詩織さんの事が知りたくてしょうがなかった。 落ち込むと分かっていても、2人はどうやって出会ってどんな関係なのか知りたかった。 好奇心ではないけれど、そう思っていた事を今は死ぬ程後悔してる。 聞かなければ良かった……。 ううん。 昨日今日現れた私が聞いちゃいけなかったんだ。 まさか。 詩織さんが、あれほどまでの想いを抱えてたなんて思ってもみなかった。 あれが詩織さんの愛し方なんだ。 今日、私に会いに来たのだってきっと不安だったからに違いない。 そして詩織さんの本気を思い知らされた。 私が貴女の邪魔をしてるの?   私が貴女達の間に割り込んでしまったから、貴女は不安なの? 貴女はこれまでに、どれだけ涙を流して来たの?   彼女の、彼への想いを知ってしまった今は切なすぎる。   彼に遊びだと言われるのが、怖くて前に踏み出せない私。   彼が遊び人だと分かってても、その関係でいいと言う詩織さん。  それでも彼に同じ想いを抱えた女が2人。 詩織さんの気持ちは分かった。   じゃあ私は……? 一体、どうすればいいんだろう。   彼と再会して半年。 好きになったのが数ヶ月前。   彼女の気持ちも分かるけど、私には詩織さんの様な愛し方は出来ない。   詩織さんの想いに比べたら、私の気持ちなんてちっぽけなんじゃないかなと思えて。   だったら私が、彼への想いを断ち切るしかないんだよね……。   彼から好きと言う言葉は未だにないし。 だって。 私もセフレなんだから……。 詩織さんとの関係に比べたら、私なんて真新しいオモチャみたいなものだもの。 今なら彼を諦められる。 今ならまだ引き返せる。   悩んだ挙げ句、彼との関係を終わらせる事に決めた。   彼女の彼に対する深い想いに敵(かな)わないって思いを都合良く正当化する。   私はズルい女だ。 本当はそんな綺麗事じゃなくて。 自分に自信がない私は、詩織さんを言い訳にして、この恋から逃げる事を選んでしまったの。   この時はこれが最善策なんだと勝手に思い込んでいた。   こんな事。 何の解決にもならないのに……。
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