1043人が本棚に入れています
本棚に追加
/158ページ
詩織さんと会った日から、彼を少しずつ避けるようになっていた。
いつもならバイトが終わった後にしていた、寛(くつろ)ぎタイムにもあまり参加しなくなった。
みんなが寛いでいる時に、さっさと着替えて早々店を出る。
これが私の最近のバイトでの日常。
いざ彼の事を諦めると決めても、こうしてバイトで顔を合わせてしまうから、こうでもしないと諦められなさそうで……。
ただ、彼からの誘いをなるべく断るようにしても、全てを断れない私は言われるままに彼の誘いに応じてしまう。
矛盾してると思うけど、彼の誘いに応じた時は拒めずに何度も彼に抱かれた。
こんな状況でも、彼に誘われるのは嬉しいと思う自分が居た。
その一方で。
彼に抱かれながら、詩織さんを思い出して切なくなった。
彼に抱かれた後は必ずと言っていい程、自分の部屋で泣いた。
最近はずっとそれの繰り返し。
本当は分かってるの。
詩織さんの事だけが切ないんじゃないと。
彼を諦めようと思えば思うほど、胸が苦しくなる自分がいたから。
こんなにも彼を好きだったなんて……。
今更ながら、彼への想いが大きくなっている事に気付かされる。
でも。
終わりにしなきゃダメだよね。
彼からの言葉は期待しちゃダメなんだから……。
油断していたら、思い出す詩織さんのあの言葉。
『飛翔は誰にも本気にならない』
あの日から何度もリピートしていて耳から離れない。
今の私には呪縛のように思えて仕方ない。
どうしたら彼を忘れられる?
もしディズニーランドに行ったあの夜に、彼に抱かれなかったらこんな気持ちにならなかったのかな?
多分。
答えはNOだと思う。
あの夜がなくても、きっと彼に惹かれていた筈だから。
それは私にとって必要でも、彼には必要じゃなかったんだよね。
ダメだなぁ私。
元々。
ヘタレな私は詩織さんと会ってから、一層ヘタレ街道を突っ走っている。
杏子の店に行く気にも、由希とも飲む気にもなれないでいた。
こんな時でもあの2人は、私をもっと撃沈させるだろうし。
まして。
詩織さんを素敵な女性(ひと)って言っている美咲とは、到底サシで遊ぶ気にもなれなくて。
ただひたすら、毎日どうしたらいいのかを自問自答しながら過ごしていた。
何か……。
今の私って、軽い引きこもり状態みたい。
本当どうしていいか分からない。
最初のコメントを投稿しよう!