逃げ道

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「全然!寧(むし)ろ大好き」 「そう言って貰えて良かった。じゃあ行こうか?」 目的の場所には一般車両は乗り入れられないから、手前にある駐車場からそこまでマコトと肩を並べて歩く。 ここに来るのは久しぶりだけど、色んな事で悩んでる今の私には十分すぎる程の癒しの空間。 橋を渡ると目的地が見えてきた。 「ねぇ、マコ。何でシーパラに連れて来てくれたの?」 水族館があるピラミッド型の建物を見ながらマコトに訊いてみた。 「ん?それはまだ秘密」 階段を下りた所にチケット売り場があるのは覚えてたけど、目の前には前回来た時にはなかった建物が。 ドルフィンファンタジー? 更に、チケット売り場にある見慣れない言葉。 アクアリゾーツ……。 って何? 前回この八景島シーパラダイスに来たのが約10年前。 その当時はまだ『アクアリゾーツ』たる言葉じゃなく、普通に水族館だったのに。 そんな事を考えながらその場に突っ立っていると、チケットを買ったマコトが戻って来た。 「はい、これ萌香さんの」 そう言ってマコトはチケットを私の手首に巻いてくれた。 そうそうこれこれ、思い出した。 八景島シーパラダイスのチケットって、カードタイプじゃなくて腕に巻くんだった。 うわっ、懐かしい。 「あ、ありがとう。いくらだった?払うよ」 そう言ってバッグの中に手を入れようとしたのをマコトに制された。 「今日は俺が払うから、萌香さんいいよ」 「えーっ、何で?私が払うよ」 「昨年のディズニーをドタキャンした時のお詫びもまだしてないじゃん」 ドキッ。 何気ないマコトの言葉にあの時の事を思い出した。 同時に忘れたくても忘れられない詩織さんの事も脳裏に浮かんで、今度は胸が締め付けられる。 「萌香さん?」 マコトに呼ばれてハッと我に返る。 「えっ?じ、じゃあお言葉に甘えちゃおうかな」 「うん、行こうか?」 マコトは嬉しそうにニコリと笑い一緒に水族館の中へ入ると、直ぐ右側に某バラエティー番組の特設水族館があり、目の前にジンベイザメが見れる水槽への矢印があった。 「嘘っ!ここでもジンベイ見れるんだ!見たい」 「萌香さん、それよりショーが始まるから先にそっち見に行こう?」 マコトに促されエレベーターで4階まで上がると、ショー用のプールと観客席があった。 もうこれだけでテンション上がってくる。 「萌香さん、俺トイレ行って来るから先に席座ってて」
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