逃げ道

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「はい、これ」 飼育員の女の子に指定された場所に移動すると、マコトが通行証のようなものを手渡してくれた。 「ねえマコ、これは……?」 「あぁ、1日2回バックヤード見学が出来るんだって。ショーの見学はこれだけだからさっきトイレ行くついでに予約しといたんだ」 「へぇ、そうなんだ?」 こんなのがあるんだ、全然知らなかった。 でもバックヤードを見れるなんてワクワクする。 定員が集まったのか、プラカードを持ってた飼育員の女の子がバックヤード見学の説明をしてくれる。 他のお客さんに混じって彼女の後をついて行く。 「見学出来るなんて知らなかったよ。マコよく知ってたね?」 「まぁね」 エレベーターを降りた所で長靴に履き替えると、いよいよバックヤード見学の始まりだった。 飼育員の説明によると、動物達に触れるのは禁止だけど写真は大丈夫らしい。 一通りの説明が終わり長方形の容器で足を消毒してから中に入ると、左側にペンギンとセイウチの檻があり、右側にイルカ達が泳ぐプールがあった。 飼育員の女の子は先ずペンギンの説明をしてくれて、もう1人の飼育員の女の子が1羽のペンギンを檻から出してくれた。 次の瞬間、お客さんがスマホを取り出してその愛らしさをカメラで撮り始める。 もちろん私もね。 人慣れしてるペンギンは身動きもせず、さながらアイドルの撮影会のようだったけど。 ペンギンは檻から出してくれた飼育員さんの後をヨチヨチ、ペタペタ歩いてる姿が 堪らない。 プラカードを持って方の飼育員の女の子が次にプールの淵に立ってイルカの説明を始めた。 そうするとイルカ達も餌をくれる人と認識してるのか、彼女の方に泳いでくる。 ジャンプでアピールするけど、やっぱり飼育員さんが歩くと後をついて泳いでくる。 飼育員さんの説明によると、イルカがジャンプをするのは体に付いた垢を落とす為なんだって。 その説明に誰もがへぇと感嘆の声を上げた。 ペンギンと違ってずっと泳いでるイルカ達をカメラに納めるのは至難の業(わざ)だったけど、誰もがスマホを手放さなかった。 次に案内されたのが、ショーで飼育員さん達がイルカに指示を出してた所。 つまり、ショーのステージの部分に私達は居る。 さっきまで客席からこっちを見てたのに、今は客席を全体的に見渡してるなんて不思議な気分。 それでも滅多に体験出来ない事を純粋に楽しんでいた。image=487072912.jpg
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