逃げ道

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プールを見るとジンベイザメが悠々自適に泳いでいた。 「こんなに間近でジンベイ見たの初めてだよ」 「俺も」 私の言葉にマコトもそう言う。 ここまでくると飼育員さんの説明も左から右に流れていく。 それは多分私だけじゃなく、他のお客さんも同じだと思う。 ジンベイがプールサイドに来る度に、カシャカシャとスマホでシャッターを切る音が周りから聞こえてきた。 「じゃあ移動します」 飼育員の女の子が説明を終えて次のブースに向かう。 もう少しジンベイを見ていたいと後ろ髪を引かれ、他のお客さんと共に後をついて行った。 次の瞬間、ジンベイの事は頭から吹き飛んだ。 周りのお客さんからも「可愛い!」と言う声が飛び交った。 見学最後はシロイルカのプールだった。 特徴的な頭の形をした4頭のシロイルカがぐるぐるとプールを泳いでいる。 ペンギンもセイウチもジンベイも可愛いくて良かったけど、イルカを見てるこの瞬間だけは何もかも忘れられた。 もうめちゃめちゃ可愛い過ぎ! そして何よりも癒し……。 私にとってイルカはそんな存在なんだ。 水族館もそうだけど、何よりイルカが大好きな私は、昔からへこんだ時にはいつも水族館に行ってイルカを見て癒されていた。 それぐらい大好きなイルカが、今は水槽の外側からじゃなくてこんな間近で見れるなんて本当に嬉しい。 そんな夢のような時間も終わりに近付いた。 入口とは違う場所から靴を履き替えた所に戻って来た。 靴を履き替えると、飼育員さんから質問はないかと尋ねられる。 「シロイルカとベルーガって何が違うんですか?」 お客さんの1人が訊いてきた。 「ベルーガはロシア名で、白いヤツと言う意味なんです。和名がシロイルカなんですよ」 へぇそうなんだ! 他にも初めに見たイルカ、バンドウイルカとカマイルカは最も多く飼育されてるとか、イルカの雄と雌の違いはお腹を見れば分かるとか(雌はお腹に『小』ってなってて、両サイドはおっぱいなんだって)、色々教えて貰った。 飼育員になるには今は専門学校があるけど、正社員になれるのは四大卒の人だけで、ほとんどがアルバイトなのだと言う事も初めて知った。 そして案内してくれた飼育員の女の子は今日がデビューだったと知り、頑張ってと激励とお礼を言ってバックヤード見学は終了した。 「バックヤード見学なんて知らなかったから楽しかった。マコありがとう」 マコトにお礼を言った。image=487073165.jpg
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