1043人が本棚に入れています
本棚に追加
/158ページ
マコトと笑いながら順路に従って行くと、一気に視界が広がる。
この水族館の中で一番大きな水槽。
エスカレーターで上って行くんだけど、天井も水槽になっていて魚の他にエイやらサメが悠々自適に泳いでいるのが見られる、言わばこの水族館の名物。
ドラマでもよく使われてて、初めて来た時は感動したのを覚えてる。
ここでも立ち止まって水槽の中の魚たちをゆっくりと眺めた。
それでもマコトは、嫌な顔しないで私に付き合ってくれる。
淡水にしろ、海水にしろ水槽の中で泳ぐ魚を見てると本当に癒される。
ヤバい。
魚たちを見てたらまた潜りに行きたくなっちゃった。
「私さ、昔から魚が泳ぐ姿が好きなんだ。1日中見てても飽きないし」
「あっ、分かる!魚が自由に泳いでる姿って見てて気持ちいいよね?こっちまで力が抜けてリラックスしちゃうっていうか……」
水槽にへばりついたままそう言いながらマコトの方に振り向くと、満面の笑顔でこんな言葉が返ってきた。
へぇ、意外。
偏見なのかもしれないけど、私の周りにここまで水族館とか魚が好きな男の人って居なかったから、マコトの反応に正直驚いた。
「じゃあさ。マコのデートの定番は水族館って事?」
「うーん。あまり意識してなかったけど、言われてみれば水族館多いかも」
「そうなんだ?何か可愛いね」
「可愛い言われても嬉しくないんですけど」
マコトが口を尖らせて拗ねてるけど、それはそれで可愛い。
それを口にしたらもっと拗ねそうだから言わないけど。
「そう言う萌香さんは水族館デートないの?」
「私?まぁ、なくはないけど……学生時代の時だよ?」
「社会人になってからは?」
社会人になってからねぇ。
……。
考えてみたら社会人になってからはないかも。
改まって思い出してみたけど。
うん、確かに一度もないや。
長く付き合った廉とですら一度も水族館デートした事なかった。
「社会人になってからは初めてかも。仲の良い友達となら、何回かあるんだけどね」
「そうなんだ?」
そう言ったマコトの顔がどことなく嬉しそう。
「マコ、何ニヤけてんの?」
「別にニヤけてないし。ほら先進もう」
指摘されたのを誤魔化すようにマコトは私を促して、アクアチューブと呼ばれるエスカレーターに乗った。
頭の上にも魚たちが泳いでる姿はいつ見ても圧巻で、何度来ても飽きない。
エスカレーターを降りると雰囲気が変わった。
最初のコメントを投稿しよう!