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「別れたくないって言ったら?」
「……ごめん……」
廉はただ謝るだけだった。
「解った……近いうちに廉の部屋にある私の物郵送して!私もそうするから」
ワイングラスを元の場所に置き、バッグから廉の部屋の鍵を彼の前に置く。
絶対に廉の前で泣かないんだから……。
「萌香、本当にごめんな。でも俺なりに萌香の事愛してた……」
今さらそんな言い訳なんか聞きたくないよ。
「さよなら……廉」
そう言って席を立つと廉をその場に残して店を出た。
店を出て暫くしてから走り出していた。
溢れてくる涙を拭いもしないまま……。
そこからどうやって杏子の実家の居酒屋に着いたのか覚えていない。
「杏ちゃん。ビール空になっちゃったよぉ。おかわり!」
きっと廉が杏子に知らせたんだろうな。
店に入ると注文する前に杏子がビールを出してくれたから。
出されたビールを一気に飲み干した。
今に至っている。
「でっ?廉の相手って誰よ?」
「知らない!廉の口から他の女の名前なんて聞きたくないもん……」
「萌香……」
初めて知ったけど。
私って酔っ払うと泣き上戸と笑い上戸と怒り上戸がごっちゃになるみたい。
つまり絡み酒ってヤツ。
我ながらタチが悪い。
カウンターに伏せったまま杏子に絡み続けている。
杏子は隣に座るとヤケ酒に付き合ってくれてる。
「杏ちゃん。廉に言われたの」
「何を?」
「萌香は強いから俺がいなくても大丈夫だろ?って……」
「はぁぁ?萌香のどこが強いのよ?萌香はある意味ヘタレなのに」
「杏ちゃん酷くない?」
「冗談だってば!」
そう言いながらも杏子は、私の肩を抱いて頭を撫でてくれた。
ヤバっ。
杏子の優しさにまた涙が溢れてきちゃった。
2人でしんみりとお酒を飲んでいたら、後ろから男性に声を掛けられ私達は振り向いた。
そこには。
私達と同年代くらいで超がつく程のイケメンが爽やかな笑顔で立っていた。
「俺も1人なんで、もしお邪魔でなかったら一緒に飲んでもいいですか?」
超イケメンがそう訊いてきた。
酔っ払ってる私は快く了承する。
「どうぞ。杏ちゃんビール2つね!」
杏子は席を立つとカウンターの中に入る。
超イケメンは杏子の座っていた席に腰を下ろした。
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