失恋と運命の出逢い

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「それじゃ乾杯!」   カチンッ……。   2つのジョッキがぶつかり、ガラス特有の音が鳴る。 この短時間で何杯目かのビールを一気に喉に流し込んだ。 この人と飲んでたら気が紛れるかな? 一瞬でも廉の事忘れられる? だって。 今夜は1人で居たくないから……。 それに何よりも。 今日だけは、廉との思い出が詰まったあの部屋には帰りたくない。   隣で豪快にビールを飲んでいるイケメンをチラ見する。   ガタイいいなぁ! なんかスポーツやってたのかな? どっちかって言うと。 廉みたいに華奢な方が好みだけど。   って。 ダメじゃん私。   はぁーっ……。   どんな事していても誰かといても。 廉を思い出してしまう。   「何か食べない?」   突然、イケメンに話し掛けられた。   そう言えば。 ビールばっかりで何も食べてないかも。   「杏ちゃん、いつものお願いね」 「おっ?やっと何か食べる気になったんだ?いつものね?了解」 「いつもの?」 「ここのお店の裏メニューって言うか、私だけしか注文しない物があるんですよ」 「そりゃ楽しみだわ」   杏子が裏メニューを作ってる間、イケメンと妙に気が合い盛り上がってしまった。   「出来たよ!」 杏子がカウンターの中から出してくれた物を見て、イケメンがフリーズしている。   「これが裏メニュー?」 「うん」 「マジかよ。これはねぇだろ?」   まあそりゃそうかも。 だって。 杏子が作ってくれた裏メニューってレアチーズケーキなんだもの。   此処に来ると、必ず注文するから杏子の家族は毎日下ごしらえをしてくれてる。   当たり前のようにレアチーズケーキを頬張った。   「杏ちゃん家のレアチーズいつ食べても美味しいし、ビールも進むわ。良かったら貴方も食べてみて?」 「ビールのつまみがケーキって」  「とりあえず食べてから言ってみよ?」   躊躇してるイケメンに、無理矢理ケーキを食べさせる。   「ん?うめぇ!」 「でしょ?これがビールに合うんだってば」 「あんたは小さい頃からそればっかじゃん!」 「って事で、杏ちゃんビールおかわりね?」 「もうダメ!」   杏子にジョッキを取りあげられて取り返そうと立ち上がった瞬間。 足元がふらつきイケメンに支えられていた。   だけど……。 私の記憶はそこで完全に途切れてしまっていた。  
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