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「うぅ……ん……」
カーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。
一瞬。
自分の部屋だと思い起き上がろうとしたけど。
「頭、い、痛っ……」
痛む頭を抑えながらも違和感に気付いた。
ん?
あれ?
私の部屋ってこんなんだっけ?
耳元で聞こえる規則的な寝息が擽(くすぐ)ったい。
って。
はい!?
咄嗟に隣を見ると、鍛え上げられた上半身を露(あらわ)にしたイケメンが、私を抱き締めたまま寝ていた。
この腕の中から動ける範囲で部屋を見渡して見た。
見慣れない部屋。
そして。
ベッドの側には私と男物の洋服が脱ぎ捨ててある。
マジっ?
それを見た瞬間。
二日酔いの偏頭痛も忘れて、昨日の記憶を辿(たど)る。
昨日は廉に振られて杏子の店で飲んだくれてて……。
それからどうしたっけ?
あっ!思い出した。
その後、イケメンが来て一緒に飲んで。
だけど……。
そこからの記憶がどうしても思い出せないんですけど。
でも『何か』があったのは確実で。
認めたくなくてもこの状況が全てを物語ってるし。
っていうか。
何やってんのっ、私。
いくら廉に振られたからって、初めて会った人とエッチしちゃうなんて……。
イケメンを起こさないように腕を擦り抜けて、服を着ると逃げるようにその部屋を後にした。
イケメンのマンションを出る時から、同じ言葉で自分に言い聞かせる。
「落ち着け私!とりあえず落ち着け」
次の瞬間。
携帯が鳴り、更に焦ってしまった。
電話の相手は杏子からで、直ぐに通話ボタンを押す。
『萌香?昨日イケメンと飲みに行ったんでしょ?どうだった?』
「杏ちゃん、昨日何があったか教えて?」
『はぁぁ?萌香、もしかして覚えてないの?』
「うん……」
『っていうか、あんた今何処よ?』
「それが……」
『とりあえず、家までおいで!今日仕事ないんでしょ?』
「分かった。今から行く」
そう言って電話を切ったのはいいけど……。
ここ何処ですか?
まさか。
あの部屋に戻ってイケメン起こして、此処は何処かなんて訊く訳にもいかないし。
とりあえず。
なんとか大通りまで出れたので
タクシーを拾って杏子の家に向かう事ができた。
はぁぁーっ……。
久しぶりにやらかしちゃったよ。
大きな溜息を吐いて自己嫌悪に陥ったのは言うまでもなく。
佐伯萌香。
一生の不覚です。
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