1:prologue

2/15
1582人が本棚に入れています
本棚に追加
/650ページ
「わあーっ……!もう、もう無理ー!もう帰るー、帰らせてー!」 「うんうん、大丈夫だよ。もう帰れるからね」 校庭の隅で泣きじゃくっているのは中田香苗(なかた かなえ)。 彼女が何故泣いているのかというと、たった今、中学校を卒業したところだったからである。 だからと言って、隣でなだめるように背を撫でてくれている藤沢弥生(ふじさわ やよい)と離れ離れになるのを悲しんでいたわけではない。 なにしろ、彼女とは同じ高校に進学することが決まっていたのだから。 では、なにがそんなに彼女を悲しませているのかと言えば……。 「バカだねえ。そんなに後悔するくらいなら、告っちゃえば良かったのにさあ」 「だって、だって……。一言も喋ってないのに告白なんかしても、引かれるかなって……」 そう。つまりは、ずっと憧れていた男に告白出来ぬままに、卒業の日を迎えてしまったことが原因だったのである。
/650ページ

最初のコメントを投稿しよう!