携帯依存カタルシス

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ここはどこだろう。起き上って見渡すが大したものはなく、足元に私の携帯が転がっていた。徐々に昨夜のことが思い返される。ある時点まで記憶をさかのぼり、とあることに気付いた。昨日貰ったマスコットがない。 「おきたの?」  後ろから、舌ったらずな甘い声で話しかけられる。子供みたいだ。起きたよ、答えると嬉しそうにくるくると周りをストラップが舞った。何で私はここにいるの?君が携帯電話ばっかり見てるからだよ。つまり私が悪いらしい。ここはどこだろう。 「僕の意識の中」 「何で?」  少し懲らしめるために、可愛らしさとは真逆の解答に背中に汗が伝う。しばらく出してあげない、とクスクス笑いながら消えた。気が狂いそうだ。染み一つない白色い部屋ばっかり見ていると気持ち悪くて、全て出しそうだ。とある都市伝説を思い出した。携帯をいじりすぎると、どっかの白い部屋に閉じ込められてしまうらしい。携帯を拾って開いても画面は真っ白だ。この空間において、携帯だけが浮いている。  何時間たっただろうか。何もせずにじっとしているのは時間が酷く長く感じる。出して。連呼するけど、笑い声しか響いてこない。不気味だ。君が悪いんだよ、私は悪くないのだ。 「いや、気味が悪いんだよ。」  そんな無機物とつながってて楽しいかいと問いかけられた言葉に何も言えない。ほら、何も言えない。さらに確信をつかれた。真っ白だった部屋が崩れ始めた。どうやら私の回答で部屋が変わるらしい。ほかの人はどうだったの、と聞くと、みんな泣きだしたよとさみしげな声とともに意識が途絶えた。
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