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トウコN「2023年、夏」
○名取家リビングルーム
2023年。夏の日曜日。昼食。外から蝉の声が聞こえる。
和宣(かずのり)
「ごちそうさまでした!」
名取一(はじめ) ※以下、一
「なんだ、もういいのか?」
和宣
「うん、これからプール行くからね。お腹いっぱいでゲロしたら恥だよ」
一
「まあ、それもそうだな」
加奈子(かなこ)
「それじゃあカズちゃん、後片付けしたら送っていくから待っていてね」
和宣
「はーい。父さんもトウコも早く食べてよ」
一
「こら! お姉ちゃん、またはお姉さんだ」
和宣
「うん、7歳なったらそうするよ」
和宣が自室へ走り去る足音。
一
「去年は6歳なったらって言ってたくせに。また先延ばしか」
トウコ
「政府みたいだね」
一
「トウコ。それは──うん、面白い」
加奈子
「あ、トウコちゃん、お隣から経済新聞戴いてきたわよ。ひと月分ですって」
トウコ
「ありがとう。助かる」
一
「経済新聞?」
トウコ
「だって、入試に出るって聞いたから」
一
「中学の入試に?へえ」
加奈子
「へえ、じゃないわよ。トウコ、もうすぐ受験なんだから。あなたも少し気にしてあげてくださいね」
一
「ああ。でもなあ。女の子の人生のことはよくわからないからなあ」
トウコが乱暴に箸をテーブルに置く。
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