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「決闘だ!グラウンドで決闘をやってるぞ!!」
昼休み。一人の男子生徒がそんな声を上げた。
「マジ!?カードは!?」
「大魔導師セイヤと蒼の剣士ジロウだ!」
「うおおっ。とうとうあの二人の対決が見れるのか!」
教室内が喧騒に包まれる。
(……うるさいな)
その騒ぎのせいで、微睡みかけた頭がすっかり覚醒してしまった少年、京太郎は、ぐっとその場で伸びをする。
そして、寝ぼけた頭で周囲の状況を整理する。__決闘、大魔導師、蒼の剣士。
平凡な私立の進学校とはおよそ無縁なそのファンタジーな単語の羅列に、思わず顔をしかめた。昼寝を邪魔されたことも加わり、不愉快極まりない。
「おっ。やっと起きたか、京太郎」
「……荻原。一体何の騒ぎですかぁ、これは」
たまたま側にいた級友、荻原に問い掛ける。
京太郎の席は窓際後方にあるのだが、その窓際いっぱいに生徒が群がっており、先程から騒がしくて適わない。おちおち昼寝の一つも出来やしない。
「いいからお前も見てみろよ」
荻原が群がりの中に一人分の隙間をつくり、手招きで誘ってくる。
仕方なく、その隙間に身体をうずめる。教室の窓から身を乗り出し、校庭を眺める。
いや、正確にはそこは“校庭だった”場所であった。
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