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雨は激しさを増す一方で、止む気配などない。買ったビニール傘を片手に、遥人は正確な道筋へと戻る。
突如、雷が鳴った。豪雨が木々を襲い、荒れ狂う。
「最悪の天候じゃないか・・。天気予報もあてにできないな。」
本日は晴天、とニュースでは騒いでいたはずだが。
呆れかえり、ため息一つつく遥人。ボーっと歩く彼の体に、何かがぶつかる。
まだ幼い少女だ。
「ごめんよ。どこか痛いとこは」
「虫が!!!!!」
「・・・・は?虫?」
物音がする。見ようとしたが、急な突風に見舞われて見えない。
うっすらと目を開けてみると、何か白い物が遠くでうねうねと動いている。
その正体を悟る前に、遥人の顔に飛ばされた空き缶が激突する。
突風は止み、視界は開けた。だがそこには、先ほどの白い何かは見えず、雨雲の広がる元の世界が広がっていた。
「さっきのあれは・・・一体・・。」
少女もいつしかいなくなっており、謎は残されたままだ。
家路を無視し、遥人は何かの後を追う。
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