南国英雄

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希望と不安がない交ぜになる最南の大陸への船出。 南国の遠征軍が最南の大陸に向かっていることは悪魔皇帝の耳にも入っているだろう。 モタ、ナタ、ギータは将校たちに稽古をつけながらも精霊たちと語らい、千里眼で世界の様子を見る。 だが、精巧さではギータより上の千里眼を持つモタでは最南の大陸の雷を扱う少年の姿を捉えることは出来なかった。 時間を見つけて旗艦の船首で座禅を組んでいたモタは、すぐ側にいたナタにこう告げる。 「これはビンゴだな。きっと三英雄だ。それも自分の力を自覚して俺を操っている奴だ」 モタは嬉しそうに告げるものだからナタはため息を吐いてしまう。 「そんな奴とこれから一戦交えるのに何でそんな嬉しそうなんだよ」 「あはは。きっとリザの力になると思ってさ。仲間が増えることは嬉しいことだろ」 「まあな。俺もせいぜい気張るよ」 南国の船団は三日後、最南の大陸を視界に捉えた。 リザや将校たちが旗艦の船首に集まり、もしかしたら一戦あるかも知れぬと身構えていたが、海岸に人の姿はなく、船団は無事に岸につく。 あまりに簡単に陸に着いたものだから、リザも肩透かしを食らったような顔をしていた。
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