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モタの姿がリザの前に現れる。
「モタ!」
あいも変わらずリザはモタの姿を見ると嬉しそうにする。モタがときどき消えるときがあっても、モタならばと深くは追及しない。
「モタ?」
だが、その顔色の悪さでリザは何かしらがあったのだと理解する。
「ギータが死んだ……」
「そう……なの……?」
ショックはショックだが、モタはそれに構わず淡々と語り出す。
「スミスにやられた……。スミスの妻子は救出できたのに……」
モタは悔しがるかと思ったがそうではなかった。
「報告は以上だ。スミスの妻子は丁重に扱ってくれとハメハメに伝えてくれ。航行を続けるぞ」
「え? それだけ?」
「俺はもう十分悲しんだ。立ち止まってはられない。何千年も上げなかった腰を今更下ろせるか」
「うん……。ただ兵たちには伝えさせてもらうよ」
リザの船団にギータ死亡の報は瞬く間に広がった。人格者であったギータを慕う者も多く、船団は悲しみに暮れる。モタはただ黙って船首で座禅を組んでいた。
孤独が目に見えるのならば、モタからは間違いなく孤独の霊気が溢れていた。モタと同等に語らえる者はもういない。
潮騒だけが虚しく聞こえていた。
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