81人が本棚に入れています
本棚に追加
スミスが悪魔皇帝の居城に戻ると悪魔皇帝は不機嫌な顔でスミスを出迎えた。
「何かありましたか?」
「どうもこうもドグが死んだわ。悪魔の身でありながら情けない」
「ドグが?」
スミスはドグを好きではないが、その技術には一目を置いていた。ドグが死んだということは、いよいよ悪魔皇帝は追い詰められたということだ。
「それとお前の妻子が誘拐された。同盟の手のものだろうな」
「妻子が……」
「だが、お前は同盟には降れん。ナタを殺すのに一役買い、今回もギータをちゃんと殺してきたんだろう?」
スミスは奥歯をガリッと噛み締めた。悪魔皇帝の言う通りだ。モーダーの賢者二人を殺すのに関わってしまっている。おそらく妻子は無事であろうが、スミス自体が許されることはないだろう。それだけに同盟に影響のある二人を手に掛けたのだ。
悪魔皇帝は玉座から下りて、スミスの目の前まで進み爪の伸びた指でスミスの鼻先をつつく。
「お前は死ぬまで俺から逃げられん! もうすぐ同盟の大軍が来るだろうが、お前はドグの残した兵器を使って敵を殲滅しろ。お前は未来永劫残る悪名を残すんだ」
悪名皇帝は愉快そうに笑う。この悪魔は己の身に危機が迫っているというのに楽しそうに笑う。この悪魔にとって人間は餌でしかないのだから、どんな忠臣でも簡単に見捨てる。逃げ延びてまたどこかで人を食らうための悪知恵を発揮するのだろう。
スミスにもう逃げ場はない。低い声でスミスは答える。
「御意」
最初のコメントを投稿しよう!