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「木のくせにうっせぇの!モタと俺の中に文句付けんなよ!」
闇夜に鳥の音がざわめいた。
そして虫が鳴く。
熊の声が響く。
狼が吠えた。
ナタが溜め息をまた吐いた。
「帰るよ……。どうせ、ギータのバカが迎えに来やがるし……」
「モタとギータと違い、なんなのよ……全く……」
ガウタマの木が息を吐いた。
それに呼応したナタがまた悪態をつく。
「そういや、俺もギータもモタもバカって言ったな、今……」
ナタが、ガウタマの木をまた蹴り上げた。
「ナタの友人じゃなきゃ、ぜってぇ焼いてんだからな!じゃな!」
ナタが深く呼吸をしてガウタマの木に背を向けた。
風を読むように指を西に向けて、言葉を呟いた。
「我を屋敷の兄の元へ風よ導け……ナタ・クロス……」
するとナタは風に亡ぼされるように姿が消えていく。
「モタのバカ!ガウタマの木なんかにバカにされんのはモタのくせに帰って来ないからだ!」
風が吹く小高い丘にで、ナタの声が響いた……。
後に残ったガウタマの木は静かにそびえ立ち風を受け流す。
そこにナタの姿は、既にいなかった。
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