プロローグ

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俺はある日、兄貴に打ち明けた。 "いくら人間を殺しても、渇くんだ…いくら人間の生き血を飲んでも、滴る肉を喰らっても、渇くんだ…" すると兄貴は俺を抱きしめて、言った。 『お前と代われるんなら代わってやりたい…お前はそんな苦痛を数百年も繰り返してきたんだなぁ……ごめんな…俺にはなにも力がない……だから…ごめんな…』 兄貴の目から熱い何かが流れ落ち、俺の肩の服に吸い込まれる… 俺には生まれてから感情と言うものを感じたことがなかった。 涙を流した事もなかった。 だから兄貴の涙は、酷く…熱かった。 それから兄貴は毎日俺に世話を妬いてくれた。 住む場所や食べ物。 血は最低限だけで、殆どは人間の食べ物を食べさせられた。 初めは人間の食べ物は苦痛でしかなかったが、兄貴との食事はとても楽しく、おいしかった。
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