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マリオンはナイフと救急道具を軽く揃えると階段を駆け上る。
今回は単独だ。彼らに接触すれば間違いなく命を落とすだろう。
それでもマリオンの足は動きを緩めることなく動いていた。
死への恐怖より別の衝動が勝り、それが勇気を与えてくれる。
一人では無理だった屋上跳び移りも見事に成功し、マリオンは再び酒場へと戻る。
ここからは慎重に歩いた。いつ襲われてもおかしくはない。
書斎には自分たち以外の生物が踏み荒らした痕跡は見当たらなかったが、寝室や酒蔵には人のモノではない痕跡が残っていた。
「いる……アイツらはまだここに……」
酒場へと繋がる扉の前で耳を澄ませると彼らの声のような音が聞こえた。
「酒場から出ていった……?まさかおじさんが?」
恐る恐る扉を開けると、男性が不思議な形の剣を振り回し、彼らを倒していた。
「おじさん!」
マリオンは周囲を見回してから酒場を抜ける。
「マリオンちゃん!?どうして……」
「私、おじさんが心配で……でもその剣……」
「大丈夫だ。おじさんは神機使いだから」
男性は周辺の敵を始末するとマリオンに駆け寄った。
「じん……き……?」
「そう。アイツら……アラガミに対抗する戦士で……ぐっ!」
マリオンに気をとられていた男性を巨大な剣が貫く。
「あ……あぁ……おじさん……」
音もなく近寄ってきたソレは男性の死体を投げ捨てるとマリオンを見た。
「ダメ……お願いやめて………………」
そこからはよく覚えていない。話では近くで戦っていたエレナがマリオンを保護し、背中に傷を負いながらも連れ帰ったと聞かされたが、それ以上に自分のせいで男性が命を落とした現実が辛かった。
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