10人が本棚に入れています
本棚に追加
ぶら下がる手が痺れてくるが、今落ちるわけにはいかない。
何とか身体を持ち上げようとしたその時、ジャージの隙間から光がもれているのに気が付いた。
(御守りが・・・)
暖かいのに、氷が肌に触れているように痺れてくる不思議な感覚。
ズササッッ!
引き摺るような音がして下を向くと、明らかに熊狼が後退りをしている。
どうやら自分よりもずっと身体が小さい相手に、気押されているようだ。
熊狼の視線の先を追った桜は、息をのんだ。
奴と対峙している黒いものの額の中心が、スッと横に裂けたように見えたのだ。
そして、その傷がそのまま上下にゆっくりと開く。
そこに現れたのは、深い青。
青い、青い瞳。
敵なのか味方なのかもわからないものの姿に、魅入られたように目が離せない。
それが、突然桜をとらえる。
「あっっ・・・!」
マズイと思った時はもう既に遅く、腕をのばしたまま桜の身体は熊狼の目の前に落下しはじめた。
最初のコメントを投稿しよう!