始まりの合図

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吹く風は、緩く暖かい。 しかし、そんなことを感じられる程桜には余裕はなかった。 「ちょ・・・何処までいくのよ。」 何度名前を呼んでも、止まらない。 それどころか、チラチラ後ろを確認して追いつかれそうになったらまた走りだす。 (勘弁してよ~~~。) こんなことは、今までなかった。 周りもビックリするほど、利口な犬なのだ。 お陰で、犬に向かって喋る、ある意味桜の独り言がずいぶんと増えてしまった。 マロは、桜が拾ってきた犬だ。 母と二人になったころ、よく学校で喧嘩をした。 子供は純粋で、時に残酷だ。 ただ、桜は泣いて閉じこもらず、守るために攻撃にでた。 今でこそないが、その頃は女の子なのに傷だらけ、泥だらけで家に帰ってくることも多かった。
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