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母は、じっと桜を見て頭を撫でながら、しっかりとした口調で言った。
最期まで大切に出来るなら、一緒にいなさいと。
それからは、餌もトイレも散歩も桜がした。
お手も伏せも待ても、覚えるのは早かった。
目の上に丸い二つの模様がついていて、桜を前に首をかしげた時や、ツンとそっぽを向いたとき等は、まるでどこかの本でみた平安貴族のようだ。
だから、マロ。
フルネームは、マロ・デ・オジャール。
もちろん、フルで呼ぶことはまずない。
そして、彼は急激に成長した。
モコモコの薄茶色の毛はフサフサからサラサラになり、顔つきも丸顔だったのが鼻先がぐっとのび、凛々しくなった。
おそらく雑種だと思うが、犬というよりも狼に近いような気がする。
常に寄り添い暖めてくれるマロは、兄弟のいない桜にとっては大切な家族の一員だった。
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