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「フゥ――――ッ!」
「ハハッ・・・つかまえた・・・って???」
腹這いになりながら鎖を掴み、それをグルグル手首に巻き付けた桜の前に、一匹のまだ小さい黒い生き物が背中の毛を逆立てていた。
どうやら猫のようだが。
精一杯、虚勢をはっているそれの額には、横一文字の傷らしきものが見える。
それを守るようにして、マロの尻尾がくるりと囲っていた。
「もしかして、この子を見せるために私をここに連れてきたの?」
「アンッ」
ご名答と言わんばかりに、元気よく吠える。
(なるほどね・・。)
溜息をつきながら、公園の中にいることも忘れて、まじまじとその小さな生き物を見つめた。
今触ったら、ひっかかれそうなくらい警戒している。
なんとなくこういうシチュエーションは、好きな映画であった気がする。
映画では、手を差し出したら噛まれたような・・・。
「じゃぁ・・・。」
そっと右手をだしながら、よしと一人で頷き呟く。
「お前の名前は、テトだよ。」
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