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桜は途方に暮れるしかなかった。
確かに、昔から方向感覚は良い方ではない。
はっきり言うと、オンチだ。
しかし、マロを追いかけてそんなに遠くまで来た覚えはないのに、ここが何処なのか見事に分からない。
合宿がどうこうという問題ではすでになく、家に帰ることができるかどうかも怪しい。
唯一の救いは一人ではないということだが、その頼みの綱のマロは、眉間にしわをよせている桜とは逆になんだか嬉しそうだ。
おしりをフリフリついてくる。
(こやつは、散歩と間違えているんじゃなかろうか・・・。)
不安な気持ちを隠すように、マロに話しかける。
「そういえば、テトは何処に行ったのかな?」
「ワウ?」
「ほら、あの黒い子だよ。」
「ムフン・・・。」
「おまえも、分からないの?」
「ワオン!」
「もうちょっと、心配しなさいよ・・・。まだ、小さかったんだから。」
「ウワン。」
「そうだね~。見つかればいいんだけど。」
どうやら、会話が成立しているらしい。
とにかく、倒れていた場所からもう一時間ほど歩き続けている。
周りは、同じような鬱蒼とした雑木林が広がっている。
どう考えても、公園の裏山ではなさそうだ。
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