危機との遭遇

2/12

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
桜は途方に暮れるしかなかった。 確かに、昔から方向感覚は良い方ではない。 はっきり言うと、オンチだ。 しかし、マロを追いかけてそんなに遠くまで来た覚えはないのに、ここが何処なのか見事に分からない。 合宿がどうこうという問題ではすでになく、家に帰ることができるかどうかも怪しい。 唯一の救いは一人ではないということだが、その頼みの綱のマロは、眉間にしわをよせている桜とは逆になんだか嬉しそうだ。 おしりをフリフリついてくる。 (こやつは、散歩と間違えているんじゃなかろうか・・・。) 不安な気持ちを隠すように、マロに話しかける。 「そういえば、テトは何処に行ったのかな?」 「ワウ?」 「ほら、あの黒い子だよ。」 「ムフン・・・。」 「おまえも、分からないの?」 「ワオン!」 「もうちょっと、心配しなさいよ・・・。まだ、小さかったんだから。」 「ウワン。」 「そうだね~。見つかればいいんだけど。」 どうやら、会話が成立しているらしい。 とにかく、倒れていた場所からもう一時間ほど歩き続けている。 周りは、同じような鬱蒼とした雑木林が広がっている。 どう考えても、公園の裏山ではなさそうだ。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加