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「ガゥゥゥ――――ッ!」
閉じた目を薄く開くと、マロが熊狼の喉元に喰いついていた。
「マロっ!」
熊狼は、身体を反らし爪をたて引き剥がそうとしたが、マロはそれをヒラリとかわして地面に着地する。
そして、間をあけずに今度は足に噛り付いた。
灰色の毛に、鮮血が滲む。
「ウボォォォ――――ッッ!」
「ガウルルル――――ッッ!」
二匹の睨み合いの中、桜は警戒しながら立ち上がり態勢を整えると、目を逸らさずゆっくりと後退りし、距離をとろうとした。
桜とマロは、熊狼を挟んで真逆の位置にいる。
獣は、どうやらマロに標準を定めたようだ。
おそらく、マロが仕向けている。
主人を守るために。
(やばい・・・)
いくらマロが犬の中では大型とはいえ、二匹を比べるとまるで大人と子供だ。
このままでは、危ない。
何か・・・何かないのか?
そう、肩の強さなら自信がある。
桜は、音を立てないように足元の石を拾った。
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