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(・・・できる。私はできる!)
今まで、何度も呪文のように繰り返してきた言葉を頭の中で唱えながら、細く長く息を吐く。
獣は、前傾姿勢になり今にも飛び掛かろうとしていた。
(・・・今だ!)
桜は、握った石を熊狼の後頭部にむけて、思いっきり投げつけた。
「グオォォァ」
多少ずれたものの、右耳後ろにヒットし、マロへの注意がそれる。
その隙を逃さずもう一つ投げつけると、今度は振り向きかけた熊狼の鼻っ面にガンッと音を立てた。
「ゥゥゥゥ―――」
(そう・・・お前の獲物はこっち・・・)
「マロ、待て!」
そう言うと、桜は駄目押しでもう一つ石を投げつけ、マロとは逆方向に走りだした。
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