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さっきよりも身体の硬さはとれたものの、足の速さで勝てるとは思わない。
なんせ、相手は人間ではない。
ならば、考えればいい。
今、誰もいない何も持たない状態で、出来る事は限られてくる。
チラリと後ろを向くと、案の定グングンと距離をつめられている。
それでいい。
今は、出来るだけマロと離れたい。
桜は、走りながらあるものを探していた。
(早く、早く!!)
良いものがなかなか見付からないが、ゆっくりしている余裕はない。
真後ろで、熊狼の荒い息づかいが聞こえる。
もう、限界だ。
(あれだ!!)
桜は、スピードを落とさずに一本の大きな木に向かっていった。
そのまま熊狼の飛び掛かるタイミングを逃さず、太い木の枝に両手を伸ばしてつかまる。
幹に足を引っかけて、クルリと逆上がりの要領で身体を上に押し上げたのだ。
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