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(でき・・・た!)
獣は目の前から急に獲物が消え、ブレーキがきかず、隣の木に身体ごと体当たりをする形になった。
その隙に、桜は呼吸を整える時間もそこそこにもう一つ上の枝へと上り、木の葉で身を隠す。
(ここまでなら、届かないはず。)
幹に背中を預けながら、息を吐き出す。
後は、どうマロと合流するかだ。
ここが何処であろうと、マロと一緒に帰らないと意味がない。
疲れた・・・早く、帰りたい。
(お風呂に入って、ご飯食べて、そして・・・)
本当に戻れるのかどうか、見当もつかない。
しかし、ほんの少しの希望にでも縋っていないと、どうにかなってしまいそうだった。
桜が現実逃避ともいえる思考に陥っていたとき、突然ドシンという音と共に視界が揺れた。
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