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「アオーンッッ」
いかにも〈どうしたらいいんだ〉と言いたげな鳴き声が聞こえたのと同時に、ビクッと身体を震わし、目を開けた。
足元からゆっくりと上に向かって、熱が戻ってくる。
目の前は、草、草、草。
どうやら俯せに倒れているらしい。
「へっ・・?」
どこから出たのか分からない声を出して、首を動かした。
「ワンッッ」
見覚えのある生物が、こちらを覗き込みながら、尻尾を千切れんばかりにふっている。
左右に揺れる見事なそれが草をたたき、バシバシと音をたてていた。
「・・・・マロ・・・?」
「ゥワン」
どうやら、なかなか目を覚まさないご主人様を心配していたようで、頬からおでこから彼の唾液まみれだった。
しかし当の本人は、愛犬の名を呼ぶも状況が掴めず、暫く動かない。
マロがたたく草の音だけが辺りに響く。
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