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「なんか、機嫌がいいじゃない。やはり、先輩効果ですかね。」
恵子はニヤニヤしながら、桜と並んで歩く。
「なっ・・違う・・・わけじゃないけど。」
もともと部活はこれ、と決めていたわけではなかった。
ところが、クラスメイトに誘われて部活見学をしていたときに、キュンときたわけだ、その先輩に。
それがなければ、おそらく恵子と同じ吹奏楽部に入っていただろう。
不純な動機で入った部だったが、自分にあっていたらしく、あれよあれよという間にもうすぐ引退だ。
全国大会とか、オリンピックとか、まったく関係のない世界だったが、一生懸命に練習をして勝つというのは、どのレベルでも気持ちがいい。
ただ、その先輩との関係は一向に進まず、彼の卒業式でも想いを伝えられないどころか、声すらかけられなかった。
つまり、現在も片想い進行形なのだ。
その先輩がOBとして参加するこの合宿を前に、桜は一大決心をした。
せめて、ちゃんと気持ちだけは伝えようと。
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