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「ねぇ、あれ、あんたの犬じゃない?」
立ち止まった恵子が指差す方向を目で追うと、一匹の犬がこちらを見てお座りをしている。
「・・・・その通り。」
思わず間抜けな返答をして、桜は鼻の頭をかいた。
つい15分ほど前に、“行ってきます”と家で頭を撫でてきたはずの愛犬が、鎖を引きずった状態でそこにいる。
「あ・・・こら、マロッ!」
名を呼んでつかまえようとしたが、桜とは逆方向にてってっと歩いていく。
これから合宿だが、だからといってほっておくわけにもいかない。
悩んでいる間にも、マロはどんどん行ってしまう。
「ごめん、恵子。ちょっと行ってくる!」
「あっ、さくら・・・」
恵子の声を待たずに、桜は走りだした。
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