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「しかし、名前がないというのは不便だな。娘、わしが名をつけても良いだろうか?」
「え………?」
「そうだな。……『神無』でどうだ?」
「かん……な…?」
『かんな』私の……名前??
私、もう『化け物』じゃないの?
今日から周りの人達みんな、私を『かんな』ってちゃんとした名前で呼んでくれるの?
「…………。」
「気に入らぬか?」
名前の良し悪しなんて分からなかったけれど、名前で呼んでもらえることがうれしかった。だから、彼女は思いきり頭を左右に振った。
「そうか。神無。姓は、『染羅木』と名乗るがよい。」
「そめらぎ、かんな……。」
「神無。お主は今日から此処で暮らすのだ。そして、してもらわなければならぬことがある。」
彼女は静かにコクンと頷いた。
「まぁ、難しいことはまた明日だ。神無。今日はゆっくり休め。」
それから、彼女は部屋の外で待機していた女に連れられ部屋を出た。
ー―ー―……。
「ご家老様。あの娘、どうでしよう?」
「上出来だ。神無はいい殺し屋になるぞ。さすがは染羅木の血を引く者ということか。」
染羅木。修羅に染まる。
代々、殺し屋として暗躍し、裏世界で名を馳せた一族。
それが神無が生まれた家。
「これから殺し屋として神無を教育させる。生まれ持ったその才能、開花してもらうぞ。」
「………。ご家老様、一つお聞きしても?」
「なんだ?」
「なぜあの娘に『神無』という名を?」
「くっ……。神はいない。あの娘にぴったりの名だと思わぬか?神などいない。これから何度もそう絶望する運命にあるのだからな。」
「…………。」
染羅木神無、これからしっかり働いてもらうぞ。
「くくくく、はーはっはっは!!!」
男の笑い声が部屋中に響き渡った。
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