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時は幕末
徳川幕府12代将軍家慶の時代。
ある一人の少女がいた。
少女は、生まれて間もない頃に実の両親を亡くした。
同じ集落に住んでいた村人達も死に、故郷は焼け落ち、帰るべき場所さえもをなくした。
だが、当時、ほんの赤ん坊であった少女は生き残った。
少女を抱いて、逃げ延び今まで育ててくれたのが今の両親だった。
最初は優しかったのだ。
両親は本当の娘のように少女を可愛がり育てた。
けれど…………。
少女は異質な力を持ち生まれてしまった。
それを知っても両親は大切に育ててくれた。
それでも、少女が持ち生まれた力はあまりにも強大すぎたのだ。
それは成長するに連れ、大きなものとなり……。
幼く、力の制御を知らない少女はその力に呑まれ暴走した。
家は崩壊寸前となり、その騒ぎが原因で両親と少女は村を追われた。
実の両親が亡くなり1年半が過ぎた頃だった。
それ以来、義理の両親は少女を恐れるように。
その力をを他の同い年の子供に知られれば、当然恐れられる。何の力も持たない人間には、少女は『化け物』以外の何物でもなくて……。
いつからだかは、分からないけれど、物心がついた頃には『化け物』だった。
『化け物』以外のなんとも呼ばれなくなっていた。
そんな時、少女の前に現れたのは幕府の使者。
『幕府よりの命だ。この娘、我々が引き取らせていただく。』
そう言って彼らは少女を連れていく。
少女は黙ってついていくだけで、少女の目には何も映っていなかった。
『助けてほしい』とも『ここにいたい』とも言わない。
言っても無駄だと、ここに居場所はないのだとわかっていたから
一瞬見えた両親の顔は、安堵のような、嬉しそうな表情で。
そんな両親の姿を最後に、少女は家を出ていった。
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